株式会社彩蔵ファームの公式サイトは、飾りを足して魅力を演出するのではなく、産地の風景写真と大きな余白によってつくり手の姿勢を伝えるデザインでまとまっています。広島の無農薬野菜や有機野菜を扱う生産者のサイトを構想している方にとって、参考にしやすい作り方だと感じました。
この記事では、広島県世羅郡世羅町で有機野菜を育てる同社のサイトを、Webデザインの見本として分析します。配色、ファーストビュー、写真の選び方、情報設計、UIの細部まで、実際の画面から読み取れる範囲で順に見ていきます。
生成りの白と深い緑に絞ったトーン&マナー
結論から述べると、このサイトの印象を決めているのは色数の少なさです。背景は純白ではなく、わずかに温かみを含んだ生成りの白でページ全体が統一されています。ヘッダーからフッターまで同じ地色が続くため、セクションが切り替わっても視覚的な断絶が起きません。
文字色には深い緑から紺に寄った濃い色が使われ、地色との明度差がはっきりしています。彩度の高い色を背景や見出しに持ち込まず、色の主役を写真の中の緑に譲っている点が、農園というテーマとよく噛み合っています。
純白を避けた背景色が写真をやわらかく見せる
背景に純白を使うと、写真との境目が強く出て画面が硬くなりがちです。このサイトはほんのり黄みを含んだ白を敷くことで、写真の縁が背景に自然になじみ、全体の空気がやわらかくなっています。
紙のような質感を感じさせる地色は、土や作物を扱う事業のトーンとも無理なく揃います。色を足さずに雰囲気をつくる手法として、参考になる部分です。
ファーストビュー直下に置かれた濃い緑の帯
風景写真のファーストビューが終わった直後には、黒に近い濃い緑の帯が水平に差し込まれています。明るい写真と明るい背景の間に濃色を一本挟むことで、画面がいったん引き締まり、ここから下は別のパートだと視覚的に伝わります。
区切り線ではなく面で仕切っているため、スクロールの流れの中でも存在感が出ています。淡いトーンが続くサイトほど、こうした濃色のアクセントが効いてきます。
ファーストビューは風景写真と明朝体のロゴタイプで構成
ファーストビューは、青空と紅葉した里山、その手前に広がる畑を写した横長の写真を画面幅いっぱいに使っています。作物の寄りではなく引きの風景を選んでいるため、どんな土地で育てているのかが一目で伝わります。
写真の「抜け」に文字を重ねる配置
中央には白抜きの明朝体でサイト名が大きく置かれていますが、重ねられているのは畑と斜面がなだらかに続く、情報量の少ない領域です。写真の中で色や形が込み入っていない部分を選んで文字を載せているため、読みやすさが保たれています。
文字の上下には細い白の罫線が水平に引かれ、写真の中に文字の居場所をつくっています。半透明の黒を全面に敷いて写真を暗くする手法をとらずに可読性を確保している点は、写真の色をそのまま見せたい事業に向いた選択です。
ふりがなを添えたロゴタイプ
サイト名の表記には、漢字部分の上に小さくふりがなが添えられています。文字サイズの差がはっきりしているので主従が崩れず、名前の読み方を伝えつつロゴタイプとしての見え方も損なわれていません。読み方が一意に定まりにくい社名を扱うときの、素直な解決策だといえます。
サブコピーで扱う品目を即座に示す
ロゴタイプの下には、有機野菜であることと、無化学肥料・無農薬で栽培していることを示す短いサブコピーが一行で置かれています。長い説明文を置かず、スラッシュで区切った短い語の組み合わせにとどめているため、視線が止まる時間を最小限にしたまま事業の輪郭が伝わります。
ファーストビューで名前と品目と栽培方針が揃うので、読者はスクロールを続けるかどうかをここで判断できます。情報を絞る判断が効いている場面です。
反復するモチーフとスライダーが生む一貫性
このサイトの装飾は、種類を増やさずに同じモチーフを繰り返す方針で組み立てられています。要素ごとに違う飾りを当てていないため、ページを下るほどトーンが揃って見えます。
円形の線画スタンプという共通モチーフ
ページの中ほどには、野菜を細い線で描いた円形のスタンプ状の装飾が、淡い緑で繰り返し配置されています。写真の角に少しだけ重なる位置に置かれ、写真と文章のブロックをゆるやかにつなぐ役割を担っています。
塗りではなく線画で、しかも彩度を落としているので、主役である写真の邪魔になりません。同じモチーフが複数のセクションに現れることで、別々のパートが同じサイトの一部だと感じられます。
矢印とドットを備えたスライダー
写真のいくつかはスライダーとして実装されており、左右に矢印、下部に現在位置を示すドットが表示されています。ドットは総数と現在地の両方を示すため、あと何枚あるのかが分かった上で操作できます。
矢印は写真の上に白で重ねられ、常時表示されています。マウスを乗せるまで操作要素が現れない作りに比べて、スライドできることに気づいてもらいやすい構成です。
「農園について」以降の情報設計
本文パートは「農園について」という中央寄せの大きな見出しから始まります。ここから先は、産地の話、野菜セットの話、栽培方法の話という順序で展開します。
土地の紹介から始める順序
最初に置かれているのは商品ではなく産地の紹介です。瀬戸内海と日本海の分水嶺にあたる台地であることや、標高400メートルの山肌からしみ出す水を使って育てていることが、渓流の写真とともに説明されています。
商品の説明を先に出さず、まず土地の条件を語る構成は、なぜこの野菜なのかという疑問に先回りして答える流れになっています。読者の納得を積み上げてから商品へ進む、PREPに近い組み立てです。
左右を入れ替えた交互のレイアウト
各セクションは写真とテキストを左右に振り分けた構成ですが、セクションごとに写真の位置が入れ替わります。産地の紹介では写真が左、野菜セットの紹介では写真が右、栽培方法の紹介では写真が左という具合に、視線が左右に振られながら下へ進みます。
同じ並びが続くと単調になりますが、交互に入れ替えることでリズムが生まれ、スクロールが単調になりません。要素の数を増やさずに変化をつける、扱いやすい手法です。
3枚並べた縦位置写真
栽培方法のパートでは、資材を敷いた畑、苗を手に持つカット、土を整える場面という3枚の縦位置写真が横一列に並べられています。引きの風景が続いたあとに手元の距離感を挟むことで、作業の実感が加わります。
3枚とも高さを揃えて隙間なく並べているため、1枚の帯のように見えて視線が横へ流れます。写真を大きく見せる場面と、小さく連続させる場面を使い分けている点が効果的です。
文字組みとナビゲーションのUI
このサイトの落ち着いた印象は、書体と字間の扱いによるところが大きいと考えられます。見出しから本文まで一貫した方針が通っています。
字間を広げた明朝体の見出し
見出しには明朝体が使われ、字間がゆったりと開けられています。太いゴシック体で強く主張する作りではないため、農産物というテーマに合った静けさが保たれています。
本文も行間が広めに設定され、2文から3文ほどで改行されています。1画面に詰め込む情報量を抑える判断が、読み進めやすさにつながっています。
グローバルナビと現在地の示し方
ヘッダーは背景と同じ生成りの白で、左に円形のロゴマークとサイト名、右にグローバルナビが横並びで置かれています。項目はホーム、商品について、オンラインショップ、農園のあゆみ、お問い合わせ、ブログの6つで、階層を深くせずに主要ページを並べています。
ナビの中で、表示中のページにあたる項目だけがやや淡いトーンになっており、色の差だけで現在地が示されています。下線や囲みを足さずに状態を伝える、控えめな処理です。
円形のロゴマーク
ロゴマークは、英字を円弧状に配し、中央に日の出と畑を組み合わせた円形のエンブレムです。オレンジの太陽と緑の畑という配色で、サイト全体の中では数少ない暖色が使われています。ヘッダーとフッターの両方に同じマークが置かれ、ページの上下で印象が揃います。
フッターと唯一のアクセントカラー
ページの下部は、色を絞った全体の中でメリハリをつける構成になっています。抑制されたトーンだからこそ、わずかな色が効いてきます。
高い彩度を持つのはInstagramのアイコンだけ
フッターの手前には、Instagramを更新している旨のテキストと、ピンクのアイコン、そして矢印付きの短い案内が横一列に置かれています。このピンクは、生成りと深緑で統一された画面の中で唯一の高い彩度を持つ色です。
色数を絞ったデザインでは、1色だけ強い色を置くとそこに視線が集まります。SNSへの導線という役割に対して、色の使い方が素直に機能しています。
2カラムに整理したフッター
フッターは、左にロゴマーク、中央に農園の所在地や連絡先、営業時間をまとめた列、右に配送についてや利用規約、よくある質問といった補足ページへの列が並ぶ構成です。背景色を変えずに細い罫線と余白だけで区切っているため、本文からの流れが途切れません。
連絡先の情報は文字サイズを落として並べられていますが、行間が確保されているので詰まった印象になっていません。情報量の多いフッターほど、余白の取り方が読みやすさを左右します。
広島で有機野菜や産地直送の野菜を探す読者に伝わる情報
デザインの話から少し離れて、サイトが読者に何を伝えているかも整理しておきます。広島で無農薬野菜やオーガニック野菜を探す読者にとって、判断材料になる情報がどこに置かれているかという観点です。
野菜セットという届け方
商品として案内されているのは、旬の有機野菜を詰め合わせた野菜セットです。品目を一つずつ選ぶのではなく、その季節に採れたものが箱に入る形なので、届いてから中身を知る楽しみがあります。サイトには春夏秋冬それぞれのラインナップが季節ごとに並べられており、どの時期にどんな野菜が届くのかを事前に把握できます。
代表挨拶のページでは、1年を通して60種類を超える野菜を、農薬と化学肥料に頼らずに育てていることが述べられています。セットの中身が季節ごとに入れ替わる背景が、栽培品目の幅として裏づけられている形です。
配送の仕組みが具体的に書かれている
配送については、スタッフが保冷車で直接届けるエリアと、宅急便で届けるエリアが分けて示されています。直接配達のエリアは曜日ごとに市町名が列挙され、火曜日と金曜日でそれぞれ対象が異なります。宅急便では北海道から沖縄まで対応し、夏場の暑い時期はクール便に切り替わることも案内されています。
産地直送の野菜を検討する読者にとって、いつ、どういう手段で届くのかは重要な判断材料です。この情報を専用のページにまとめ、グローバルナビから直接たどれるようにしている点は、情報設計としても理にかなっています。
定期便とサブスク形式の申し込み
野菜セットは定期便として申し込む形が案内されており、サブスク形式での継続にも対応しています。申し込み後は公式LINEから追加の野菜の選択やお届け先の変更ができ、解約や再開もできる旨が示されています。継続の前提となる手続きのしやすさが、あらかじめ文章で明かされています。
農園のあゆみが担う役割
「農園のあゆみ」のページには、設立の経緯と代表挨拶、代表のプロフィールが置かれています。過疎化が進む中山間地域で、新たな雇用を生み出すことと耕作放棄地を活用することを通じて、地域の活性化に貢献することを目的に掲げている点が説明されています。
また、農業を稼げる産業として成立させ、その力が畑と人と地域を支えるという考え方も述べられています。作り手の背景を読める場所を独立したページとして用意することは、E-E-A-Tの観点でも意味のある構成です。
まとめ:静かなトーンで産地を伝えるデザインの見本
株式会社彩蔵ファームの公式サイトは、生成りの白と深い緑という限られた配色に、里山の実写と円形の線画モチーフを重ねることで、有機野菜のつくり手が持つ空気をそのまま画面に置いています。ファーストビューで名前と品目と栽培方針を提示し、産地、商品、栽培方法という順序で納得を積み上げる情報設計も、素材の力で語るタイプのサイトを考えるうえで参考になります。
色や装飾を増やさずに印象を作りたい場合、写真の選び方と余白の取り方、そして1色だけ置くアクセントの効かせ方という3点は、そのまま応用できる考え方です。産地の風景や野菜セットの中身、配送の仕組みは、実際の画面で見るほうがはるかに伝わります。広島で無添加の野菜が気になる方も、株式会社彩蔵ファームの公式サイトをご覧ください。







